[再掲載]P2Pは「永遠のNext solution」なのか?

2024年4月
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 先日、色々な人達と話した時に「P2Pは『永遠のNext Solution』で終わってしまうのではないか?」という事が話題になった。
 P2P は上手く利用すれば現状のインターネットの問題点を解決する優れた技術であるのは間違いがない。ただ、どうしてもP2Pを使ったソリューションというとどうしてもWinMXやWinnyを使ったコンテンツ配信を思い浮かべる人も多いだろう。事実コンテンツ配信者にとって「コンテンツ配信のコスト」という点だけを考えれば、P2P技術を使った方がコスト的に有利だ。現状のWinMXやWinnyの普及を考えれば、これらのツールを利用することがすぐに考えつくだろう。だがP2Pを使った「ソリューション」はコンテンツ配信だけではない。P2Pは検索エンジンや掲示板などにも応用できる。

 しかし、現状のP2Pではメリットよりも問題点があり、なかなか実用的なツールには結びつかないのが現状だ。例えば「ファイル交換ツール」の場合、「わざあり」などファイル交換ネットワークを利用した試みを出てきてはいるが、ファイル交換ネットワークを利用して合法的なコンテンツを配信するのは現状では難しい。なぜならば、合法的なファイルを流しても日本では決済機能が未熟だからだ。ファイル交換機能を使った「超流通」が実現するのは安定した決済技術が登場しない限り難しいだろう。いくらコンテンツが自由に流通しても、料金を回収できるシステムがなければ「合法な有料コンテンツ」を流通させるのは難しい。

 また、インターネットで提供している既存のサービスを単純にP2Pに置き換えただけでは、ユーザにはあまりメリットがないこともある。例えば、P2Pを使った検索エンジンは、P2Pを使った検索エンジンの場合「検索した結果」は最新のものが表示されるが、Googleなどに比べてあまりにも「遅い」。 Googleは「P2P」というキーワードで検索すると0.23秒で765,000のページを検索できるが、P2P技術を使った検索エンジンでは検索結果が現れるまで数秒?数十秒間かかると思われる。検索を行うのにこれだけの時間を待たされるのであれば、通常の検索エンジンを利用した方が良いだろう。

 また、P2Pが「Next Solution」と言われるのは、サービス運営側の「負担を軽くするためのもの」という印象があるからだろう。ユーザ数の増加に合わせて、サーバと帯域を増加させるよりも、ユーザが自分たちのサービスの負担を「分散」してくれるP2Pモデルを採用したがるのは当然だろう。

 しかし、現状のモデルを強引にP2Pに当てはめても「検索エンジン」の例を見ていただければわかる通り、通常のサービスよりも満足度の低いサービスが出てきてしまうし、ユーザに対してのメリットがほとんど無い。これでは面倒なソフトをインストールしてまでP2Pを使ったサービスを使うユーザはほとんどいないだろう。

 個人的にP2P技術は、現状の問題点を解決する「Next Solution」では無く、現状のインターネットで提供されているサービスとは「切り口」が違う別のサービスを提供する「Next innovation」の方が向いているのではないかと思う。現にP2P技術を使って、従来のインターネットとは「切り口」が違うサービスを提供し成功している分野がいくつかある。

 例えばIMは、従来はメールでしかできなかったインターネット上のコミュニケーションを一変させた。IMにより相手のプレゼンスがわかり、リアルタイムでチャットができ、さらにSkypeなどは簡単に多人数での音声チャットもできる。「相手とコミュニケーションを取るツール」という点ではメールもIMも同じだが、両者はまさに「切り口」が違うツールといえるだろう。また、P2Pを利用したグループウェアも従来のグループウェアとは「切り口」が違う。 P2P技術を使ったグループウェアは、社内外の人間とリアルタイムでコラボーレーションを実現するためのツールだ。単に安いグループウェアだけでは無い。

 今までは、従来からインターネットにあるものをP2Pに置き換える「Solution」型の考えが多かったと思う。しかし、今後は今までの技術の延長ではなく、従来とは「切り口」が違う「innovation」的な思考も必要になってくるだろう。アイデアが出てくれば、後は「Next」な技術が「today」でも使えるようにしていくだけだ。