この記事によると、P2P関連問題研究会が「P2P基本提言」という物を提出したらしい。中身は、
1 P2P技術は様々な可能性があり、インターネットにとって不可欠な技術である。社会的インフラとして積極的に取り入られるべきである。
2 P2P技術に関連して問題となった事項は、現在商用で用いられているP2Pネットワークでは解決済みである。
3 日本の裁判(Winny裁判?)にP2P技術開発は萎縮している。技術者が安心して開発できる環境を実現しなくてはいけない。
4 P2P技術を巡っては、現在も法的問題等があり、このような問題を解決すべく、立法を含めた是正手段が高じられべき。
とのことだという。
確かに、このような提言の中身は、間違ったことでは無いと思われるし、とても立派なことだとも思う。ただ、個人的にはこの提言には「時代遅れ」な印象を感じてしまう。どうしてそのように感じるのかは、以下の理由からだ。
《「P2P=ファイル共有」では無い》
私は、この研究会に出席をしていないので、なんとも言えないのだがインプレスの記事やITmedia Newsの記事を読むがぎり、これはP2Pの事を言っているのでは無くWinnyに代表されるファイル共有ソフトの事を言っているように感じられた。確かに代表的なP2Pソフトと言えば、Winnyに代表されるファイルシェアリングソフトであると思うが、Skypeのような音声ソフト、プレステ3にも搭載されているFolding@homeのような分散コンピューティング、Wさらに日本にはP2P地震情報のようなユニークなサービスもある。P2P=ファイル共有、コンテンツ配信と決めて、このような提言を出すのは、いささか時代遅れのような気もする。
《P2P開発者はそんなに萎縮しているのか?》
「萎縮している」と聞くと、日本の会社/技術者がまったくP2P技術を開発していないように思える。しかし、コンテンツ配信に限っても、Bittorrent DNA、株式会社グリッド・ソリューションズ GridSolutions inc.、株式会社ドリームボート、次世代コンテンツ配信 Einy(アイニー)/a>、ウタゴエ株式会社 Utagoe Inc.など様々な会社がある。
これだけ見ても、個人的には「萎縮している」ようには感じられない。もし「萎縮している」のであれば、それはファイルシェアリングソフトの開発ぐらいではないだろうか?
《未来が無い》
コンテンツ配信は重要なテーマだとは思うが、直接的にはエンドユーザには関係無い。せめてデバイス同士の連結やクラウドコンピューティングで提供されるコンピューター資源をP2Pで提供するなど“そう簡単に実現できない未来の実現”“エンドユーザに直接的なメリット”を提供するようなサービスの提示してほしかった。
このような「提言」は“現状”では、きっと意味があるのだと思う、しかし「P2Pの未来」を考えた場合には、このような提言は既に時代遅れでありながら最先端を装う「ナウでヤング」な提言にしか聞こえない。
コメント
委縮という内面的な表現を使っているのは、萎縮効果(chilling effect)というの英米法の考え方にもとづくものでしょう。
http://sourceforge.jp/magazine/06/05/30/1351245
実際に委縮したという結果データを示すのではなく、委縮効果があるような法的リスクの存在そのものが問題だという立場をとっているのはそのためでしょう。