「雑記帳 – デジタルデータの脆弱性」を読んで。id:cedさんの問題提起を非常に興味深く読ましていただいた。詳しい内容はリンク先を読んでいただきたいと思うが、非常に乱暴に言ってしまうと、「デジタルデータの脆弱性(デジタルデータの場合、ハードディスクがクラッシュしたらおしまいでしょ? )」、「デジタルデータの互換性(今、作成したWordのファィルが50年後も読める保証はあるの?)」の2点について書かれた物(と私は認識している)だ。
id:cedさんは、解決策しては「デジタルデータ」を「紙」に変換する事を提案している。確かにテキストデータやPDFデータの場合は「紙」に変換すれば保存は可能だ。はてなダイアリーブックのようなBlogを紙の本に変換してくれるサービスも登場しており、このような需要は高まっていくだろう。
しかし、残念ながら現在のデジタルデータは紙にできる物だけでは無い。例えば、音楽データや動画データはどうだろうか? これらのデータの場合は「紙」に保存する事はできない。
もちろん、CD等の媒体に記録して、それを保存するという考えもあるだろう。しかし、テキストデータから紙に変換する場合と違い、音楽データや動画データの再生には、データを保存する「媒体」(例えばビデオテープ、CD)とそれを再生する「機械」(例えば、ビデオデッキやCDプレーヤ)が必要だ。「未来の世界」では、これらが無くなってしまう可能性もある。
例えば、動画をビデオテープに保存したとしても、あと50年後にそれを再生する機械がなくなっているかもしれないし、音楽データをMDに保存したとしても、やはり再生する機械が無くなってしまっているかもしれない。(dccやDAT、βマックス、LDをどのくらいの人が覚えているだろうか?)
これらの解決する回答としては、結局のところデータを「デジタルデータ」で持つことだろう。デジタルデータで持っておけば、媒体があるかどうか左右されないので、再生できる可能性は広がる。
しかし、データを「デジタルデータ」で保存したとしても、なおも問題はある。それはデータの保存形式だ。MP3にAAC、WMAと音楽データの圧縮形式は様々な物がある。現在は特に問題が無く再生できるが、やはり50年後もこれらのファイルが全て再生できるとは限らない。
レコードからCD、ビデオテープからDVDに「スイッチ」したように、その時代に合わせて、データ形式を「変換」する方式も考えられる。しかし、DRMで保護されたデータなど、データが変換しにくい物もあるだろうし、その圧縮方式を提供している会社がデータ変換を許さない場合や、その会社自体が倒産してしまう場合もある。
今後は、今以上に音楽データや動画データをデジタルデータとして購入する機会も増えるだろうし、自分のプライベートな動画や音声をデータとして保存する事も増えていくだろう。10年〜30年先、それらのデータは「新しいデータ形式」に「スイッチ」できないかもしれない。
(この文章は2006年に書いた物を再掲載したものです。)