インタビュー

P2Pで地震情報の共有を! ?「P2P地震情報」開発者 たくや氏にお聞きする。?

 最近は「地震」に関するニュースが多いが、地震をテーマにした「P2P地震情報」というソフトウェアがある。

 その名の通りP2P技術を利用して地震情報を配信するソフトウェアなのだが、いわゆる「ハイブリッドP2P」と「ピュアP2P」と言われている方式を同時に実現しているというユニークな点を持っている。(ハイブリッドP2PとピュアP2Pについては、こちらが詳しい)

 まずハイブリッドP2Pで実現している機能だが、これは気象庁から配信される「地震速報」をサーバに保存し、その情報を各端末間で配信する物となっている。地震が発生した時は特定のサーバにアクセスが集中するために、P2Pを利用して情報配信が行われれば、特定のWebサイトにアクセスが集中しやすい「地震情報」でも情報配信がスムーズに行われる。

 一方のピュアP2Pで実現している機能は、ユーザが地震の揺れを感じた場合に、タスクトレイのアイコンをクリックすることでユーザ自身が情報を発信する物となっている。こちらは、サーバを必要とせずにユーザ同士の情報共有によりサーバを必要としないものとなっている。

 今回は「P2P地震情報」の制作者、たくや氏に「P2P地震情報」についてお話を伺った。



?まず、「P2P地震情報」の開発の動機などを教えてください。

たくや「わたしは、兵庫県に住んでいるのですが、2004年9月5日に紀伊半島沖・東海道沖でそれぞれ地震があって、震度3だったんです。東海道沖の地震では津波警報が発令されたことを翌朝になって知ったもので、そのあたりから、地震が気になり始めまして。」

-警報が出ていなかったのが、わからなかったということですか?

「当方の地域では津波警報・注意報どちらも出ていませんでしたが、ラジオも持っておらずそのまま寝てしまったので、(他の地域で出ていたことを)全く知りませんでした。そのあたりからというか、そのあたり(津波警報)も含めて地震情報を常にチェックしておこうと、地震情報をチェックして表示するようなプログラムを作って、個人的に使っていました。」

?なるほど「地震の情報」を常にチェックするために作られたと言うことですね? ところで、なぜ地震情報をP2Pで配信しようと思ったのですか?

たくや 「そうですね。それで、『他の人にもこのツールを配布したい』と思ったときに、気象庁のサーバーに負担が掛かってしまうのではないかということで、P2Pで配信してみてはどうか、ということになりました。」

-「P2P地震情報」は気象庁のデータ以外にも、ユーザ同士が地震情報を通知しあう仕組みもあります。これは、なぜ付けられたのですか?

たくや 「最初は地震情報チェックのみのつもりだったのですが、2chに『地震キター』というスレ、『2chの地震速報システム作ってみないか?』というスレがなかなか興味深かったので、それならばとユーザー同士で地震が起きたことを共有しあう機能もくっつけちゃいました。」

-ところで「P2P地震情報」の仕組みなのですが、これはタスクトレイのアイコンをクリックすると情報が発信される仕組みです。私は初めて見たときはこれが上手くいくのか、正直疑問だったのですが、比較的大きい地震ですと確かに普通のニュース速報より早いですね。

たくや「震度3以上の震度速報は早くても2分掛かるので、それには負けませんね(笑)。トレイアイコンのクリックという方法は、地震発生時に慌てていても押せるようにと思ってそうしてあります(実際にどうなのかはまだ未経験)。ただ、少々『うっかり』押してしまうこともあるようです(笑)」

-なるほど。ちなみに私のまわりは、初めて起動した時に「うっかり」押してしまった人が大半です(笑)

たくや「(笑) Revision 1050以降では、一応『押した』と通知するようになってるので、2回目(クリックが情報発信だと気づいた)以降の「うっかり」クリックは少なくなっていると思います。」

- なるほど。それは、最初の「2回目以降」のうっかりが少なくなりそうです(笑)

たくや「1回目は相変わらずですが(笑)」

-ところでこの機能は、ユーザの自己申告にまかせているためか「いたずらに使われる」「情報に信頼性が無い」等の批判があります。これについては、どのようにお考えですか?

たくや「それは仕方が無いと割り切っています。これは2chでも同様です。ただ、「一定数(現在は1?20で設定可)のユーザーからの情報を受けてから表示させる」こと、伝言板で「揺れていない」とユーザーのみなさんでフォローすることによって、ある程度は対策しているつもりです。

- そうですね、私も発信情報が多くなってきたら「これは本当かもしれない」と思ってその後で「速報」を見て、「ああ本当だった」と思っています(笑)

たくや「こちらも同じです(笑) あとは、情報の集まるスピード・送られてくる地域や伝言板なんかからですね」

-それと「パソコンでの災害情報の配信は、ラジオやテレビと比べて速度が劣る」といった意見や「パソコンでの緊急情報の発信は向いていない」といった意見が出ています。このような意見についてはいかがですか?

たくや「『地震情報』だけで比べると、気象庁のWebサイトの地震情報は(NHKテレビ・ラジオ放送より)1?2分程度遅いです。サーバーが分散化されている影響かもしれません。その他災害情報については、テレビ・ラジオが信頼性の面で優勢かと思いますが、(新潟県中越地震の時なんかを見ていると)インターネットではテレビ・ラジオで報道されないような情報が出ていることもありますし、(問題点はあるものの)決して『インターネットは使えない』ということはないと思います。」

-そういえば、チャット・掲示板機能も搭載されていますね。やはりこのような点を意識されてのことですか?

たくや「そうですね。ただ、実際に使えるのかどうかは今のところまだよく分かっていません。あとは、地震の揺れで不安になっている時に、少しでも気を紛らわすことができればと。」

-なるほど、確かにそういう効果もあるのかもしれませんね。

たくや「(まだ当ソフトの伝言板では経験してませんが)チャットの最中に地震が来た時なんかは、ただの雑談をやりとりしているだけでも結構落ち着くことが出来ました。・・・たぶん(笑)」

-チャット経由でユーザからのフィードバックもあると思います。ユーザさんからは、どのような意見が出ていますか?

たくや「例えば『どの地域にどの程度ピアがいるのか調べることが出来ると良いのでは』とか、『トレイアイコンのクリックはやはり“うっかり”が多いので他の方法で出来ないか』とか、チャット(伝言板)だと、Webサイトの掲示板よりも気軽に様々な意見が飛び交うので参考になります。時々こっそり見ていて「ああ、そうか」なんて思うこともあります(笑)。

-「サーバとクライアントの両方を管理されていると、難しい問題も多いと思います。何か、技術的なトラブルもありましたか?」

たくや「バグをつくってすぐに修正バージョンをリリースするのは人為的問題(笑)なのでさておいて、基本的にはないですね。ただ、数日間つけっぱなしにしていると例外0Eが発生することはあります、Windows95なので……。分散化されたので発生しても慌てなくて済むようになりましたが(笑)。」

-「サーバはWindows 95なのですか。それはスゴイですね。」

たくや「たまたま余っていたノートパソコンをそのままサーバーに使いまわしただけです(笑)。」

-「それで、これほどのシステムができるのですか。スゴイですね。」

たくや「特に大量のデータを転送するわけでもないので、大丈夫ですね。 」

- 「さて、最後に今後の予定などをお聞きしていきたいと思います。他のプラットフォームでの移植の希望が出てきていますが、予定として考えていらっしゃいますか?」

たくや「他プラットフォームでソフトウェアを開発するスキルが全くないのですが、MacintoshまたはLinuxで動作する互換クライアントを開発する(かも)、という方がいらっしゃいます。あとは、同じWindowsで互換クライアントを開発されるという方もいらっしゃいます。」

-「オープンソースでも開発をやられているのですか?」

たくや「はい、オープンソースではないのですが、開発されるという方にはプロトコル仕様書を送ってあります。また、オープンソースで開発するという方もいらっしゃいます。」


 まずは、突然のインタビューの申し出にも関わらず、快く引き受けてくださった「たくや」さん。ありがとうございました。

 地震があった時にP2P地震情報のを見ていると、たくやさんが、技術的な事をはじめとして、ユーザの1人々に丁寧に答えているのが印象的だった。スラッシュドット ジャパン 窓の杜、「Japan.internet.comのコラム」にも紹介され、今後もます々ユーザ数が増えてくると思う。

 個人的にこのソフトを使って、一番新鮮に感じたのが「地震速報」だ。最近では、RSSフィードなどを常時表示させるソフトが多いが、P2P地震情報の「地震速報」は地震があった時に、テレビのニュース速報のように情報を知らせてくれるので、逆に新鮮に感じた。現状のRSSフィードでの情報発信の場合は、配信される情報は「重要度」を考慮されていないため、どれが重要な情報かわからない時がある。そんな時にP2P地震情報のように「緊急の時」のみに情報が配信される情報プラットフォームは非常に面白く感じた(地震情報を面白く感じるのは不謹慎かもしれないが…)

 さて、たくやさんとのインタビューの後は、オープンソースで「P2P地震情報」を開発されている方達や無印吉澤さんにも加わっていただき、色々とお話を聞かせていただいた。こちらの方も近日中にP2P todayに掲載させていただきたいと思う。

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