インタビュー

SkypeはBBフォンを殺すのか -「Skypeやろうぜ」管理人、池嶋氏にお聞きする。-

 つい最近まで、人とのコミュニケーションは「会って話す」ほかに、電話や手紙など限られた手段しか無かった。しかし、現在ではインターネットを使ったコミュニケーションは、非常に活発となっている。

 例えば、電子メールは、PCだけで無く携帯電話に搭載され、常にメールを送受信できるような状態になっているし、IMの登場によりお互いのオンラインの状態もわかるようになってきている。これらは従来の「電話や手紙」しかコミュニケーシヨンの手段が無かった時代ではできなかったコミュニケーション手段だ。

 このように、電話以上のコミュニケーションツールを生みだしてきた。インターネット技術であるが、最近はメールやIMなどのテキストベースだけの「コミュニケーション」だけで無く、電話のように「音声」を使ったコミュニケーションツールの重要性も日々高まってきている。

 その中で最近に特に注目を集めているのが「Skype」という音声チャットソフトだ。従来の音声チャットソフトでは、利用者側でなんらかの設定が必要であったり、音質があまり良くなかった。

 しかし、Skypeは設定が非常に簡単で、しかも「音声」が非常にクリアであり、多くのユーザが利用している。さらに、パソコン同士だけでなくSkypeから一般の電話にかけられる「SkypeOut」というサービスも開始されているほか、最近ではライブドア社がSkype社と提携し大きな話題となっている。

 今回は、この「Skype」の情報サイトSkypeやろうぜの管理人でもあり、SoftEther社 副社長でもある池嶋俊氏にSkypeについて、お話を伺った。

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 -そもそも、なぜ「Skype」に興味を持たれたのですか?

池嶋「彼女が進学のために(地元の茨城県から)東京に行ってしまいました。それで彼女と話をするのにも、遠距離なために電話代が非常に高くついたので、パソコンで使える音声チャットを探していました。」

 -なるほど、それでは最初は彼女と話すためだったのですね?

池嶋「ええ。最初はSkypeでは無く、インスタントメッセンジャーに付いている音声チャット機能を使おうとしたのですが、上手く接続ができなかったり、音質が非常に低く、使えませんでした。そんな時にスラッシュドット ジャパン にSkypeの記事を見て、面白そうだと思ったので、Skypeを彼女にもインストールをしてもらい、実際に利用してみました。使ってみたところ、他の音声チャットソフトのように難しい設定も必要無いし非常に音質も良いので彼女にも好評でした。」

 -「なるほど。それでどうして『Skypeやろうぜ』のサイトを開設されたのですか?」

池嶋「まず、仲間内でSkypeを試していたのですが、やはりそれだけでは物足りないという事で、Skypeユーザ同士のID交換の場を作ろうと思いました。」

 -「当時はSkypeのユーザが少なく、せっかくインストールしても話す相手がいませんでしたから、こういうID交換の場は貴重でしたね」

池嶋「はい、次にSkypeの解説が非常に少なかった事があります。現在は色々なサイトがSkypeの情報を掲載しています。しかし、当時は日本のサイトはもちろん、海外のサイトもSkypeの情報があまりありませんでした。そのため、インストールのやり方やWindows98の環境では日本語が使えないなどの問題があっても、対処方法がわからない場合がありました。そこで日本語でSkypeの情報サイトを作ろうと思い『Skypeやろうぜ!』を作りました」

 -「『Skypeやろうぜ』の評判はいかがですか?

池嶋「ID交換も好評でたくさんのユーザに登録していただいています。SEO対策を(CEEK.JP NEWS開発者の)吉田がやってくれた事もあり、一時はGoogleで『Skype』で検索するとSkypeの公式サイトの次に『Skypeやろうぜ』が来ていました。このおかげで、Skype社から直接コンタクトがありました。」

 -「え? Skype社から直接的に連絡があったのですか?」

池嶋「はい。Skype社から直接連絡がありました。『Skypeやろうぜ』を見てくれていたみたいで、日本でSkypeの技術的に詳しい人間ということで私に連絡が来ました。7月の頭にSkype社のCEOが来日し、様々なソフトウェア会社を巡る必要があったため、日本人でSkypeの事をわかっている人間が必要だったようです。(また、これとは別に)朝日新聞にSkypeが掲載された日にも、掲載の前日に朝日新聞から電話で色々と聞かれました。」

 -「なるほど、先ほどのお話にもあったように、日本でSkypeの話題を取り上げたサイトの中では池嶋さんのページが詳しいですものね。そう言えば、池嶋さんのサイトを拝見していると、先日のライブトア社とSkype社との提携も事前にご存じだったような記述がありましたが、こういう関係もあったのですね。

池嶋「ええ。ライブドアとSkype社との話し合いの時に私も参加させてもらった事があります。」

-「ライブドア社の提携については、様々な意見があります。池嶋さんは今回の提携について、どのように思われますか?」

池嶋「Skypeが日本で事業をする場合、現状では大きな問題が3点あります。1点目がSkypeOutのための『ゲートウェイの問題』2点目に『ソフトウェアの翻訳』つまり日本語化の問題、3点目は『決済機能』の問題です。Skypeがライブドアと提携したのは、これらの問題を解決する意味合いが強いと思います。」

-「その3つの理由について、詳しくお聞かせください。まず『ゲートウェイ』ですが、これはどういう事でしょうか?」

池嶋「Skype同士はP2Pで通話できますが、Skypeから一般の電話に通話できる『SkypeOut』を使うときは、専用の『ゲートウェイ』を通す必要があります。日本で本格的にSkypeOutを始める時には、この『ゲートウェイ』を強化する必要があります。(音声通話を扱うのですから)この『ゲートウェイ』の運営にはISPや通信系の知識が必要となります。この事からISPの経験があるライブドアが選ばれたのだと思います。」

-「2番目の日本語化ということですが、これはプロの翻訳家の方にやってもらえば良いと思うのですが…」

池嶋「ソフトウェアの翻訳と本の翻訳とでは違います。ソフトウェアの『翻訳』には、ある程度ソフトウェアをわかっている人でなければ上手く『翻訳』できません。ライブドア社には『リンスパイア』をローカライズしたチームがいます。彼らならば、Skypeを上手く『翻訳』できます」

-「3点目の『決済機能』について、もう少し詳しくお聞かせください」

池嶋「これは、ライブドアでなければいけないという訳では無いのですが。現在のところ、SkypeOutの購入は『日本円』ではできないことや、日本でSkypeOutの認証を行う所がありません。日本でSkypeOutの認証を行う場合は、日本の企業が必要となるでしょう。」

-「SypeOutについてですが、Skypeのビジネスモデルを見ていると、現状では収入のかなりの部分をSkypeOutに頼っているという印象を受けます。しかし、SkypeOutという機能は、既存の電話会社が無ければ機能しません。このことから『Skypeは電話会社に寄生している』と考えている人もおり、普通の電話会社が無くなれば、Skypeは存続できないと見る人もいます。これについてどのようにお考えですか?」

池嶋「確かにSkypeOutだけを見れば『電話会社に寄生している』と言えなくもありません、ただ『電話会社が無くなればSkypeが存続できない』というのは間違いだと思います。」

-「それは、どうしてですか?」

池嶋「まず、Skype社はSkypeOutの他に留守番電話サービスなどのオプションメニューを用意しております。Skypeは『SkypeOut』だけが収入源なのではありません。次にSkypeのシステムは従来の電話システムやSIPフォンとは違います。従来のシステムであれば、利用者が増加していくにつれて、設備を増強しその分のコストを回収しなけばなりません。しかし、Skypeの場合はSkype同士の通話の場合、P2Pで行っているため『コスト』がほとんど発生していません、例えば、今、私は横田さんとSkypeで話していますが。基本的にこの通話によってSkype社にコストがかかる事はありません。」

-「現在Skypeが無料でサービスを提供しているのには、それなりの理由があるということですね?」

池嶋「はい。Skypeのビジネスモデルは技術者から見ると、非常にわかりやすいものとなっています。Skype同士の通話はコストがからないため「無料」で提供できます。しかし、SkypeOutの場合は『ゲートウェイ』があるため、そこにコストが発生します。つまり、コストが発生している場所には利用者から料金を徴収し、コストのかからない部分については無料で提供しています。従来のインターネットのビジネスモデルは、本来はコストのかかる部分を広告などで補って、強引に『無料』にしていました、しかしSkypeはそのような見せかけの『無料』ではありません。」

-「なるほど、確かにそうですね。さて、先ほどオプション機能の話題が出ましたが、インターネット上では様々な『新機能のウワサ』が出ています。池嶋さんから見てこのようなウワサはどのように感じられますか?」

池嶋「留守番電話サービスは確実にやると思います。『ビデオ会議』機能は来年頃には登場しているでしょう。あと、よく噂になるのはPalm版やリナザウ版ですが、これは本当にできるのかどうかわかりません。」

-「ライブドアの話に戻るのですが、ライブドアはSkypeとは別に以前からSIPフォンをやっています。これらとは競合しないのですか?」

池嶋「そうですね大きな面では競合していくと思います。ただ、SIPフォンは利用者が増えれば、それだけSIPサーバを拡張しなければいけません。SkypeはP2Pなので基本的な部分ではサーバの拡張はありません。この点できSkypeは有利です。ライブドア社の人はこれからはSkype中心で行くと話してくれました」

-「池嶋さんがご自身のBlogで書かれたとおり、SkypeはSIPフォンに勝ったということですね。そうなると今後はBBフォンなどのIP電話ともSkypeは競合するようになるとお考えですか?」

池嶋「私はSkypeの比較対象を、パソコンの音声チャットやSIPフォンと比較していたために、BBフォンなどとは比較していませんでしたが、今後Skypeの普及が進めばBBフォンなどのIPフォンと競合していくのは間違いが無いでしょう。」

-「最後に今後の『Skypeやろうぜ』の方向性についてお聞かせください。」

池嶋「『Skypeやろうぜ』を独立させてSNSをやりたいですね。SkypeのID交換をオープンなSNSでやれば面白いと思います。」

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 まずは、長時間のインタビューにお答えしていただいた池嶋さん、ありがとうございました。インタビューの合間に池嶋さんがP2Pに興味を持ったきっかけなどについても教えていただいたのだが、元々は掲示板の閉鎖騒動が原因だったという。

 例えば、ある掲示板でトラブルが起こったときに、誰が「訴訟」というリスクを取るかという事については、コストを払って掲示板というシステムを提供している個人/団体がリスクを取ることになる。そのようなシステムの形態が果たして正しいといえるのかどうか疑問であり、P2Pというシステムに興味を持ったという事だった。

 さて、Skypeの今後であるが、様々なBlogを見ているとSkypeの猛烈な勢いで普及しているようだ。また、池嶋さんのお話を聞く限りではSkypeにとってライブドア社との提携は非常にプラスとなるだろう。

 最近では様々なBlogでもSkypeに対して好意的なエントリが多い。また、携帯電話会社などもSkypeを意識した発言をしている。現状では「無料で音声チャット」ができるだけのツールに過ぎないかもしれないが、意外に「SkypeがBBフォンを殺す」のは、そう遠くない日かもしれない。

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