[再掲]P2P再考(3) 「対等な通信」は「すべてを等しくつなぐ」という意味では無い

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 前回のエントリでは、Fuktommy氏を始め、オボカタさん、Tomoさん、吉澤さんからコメント/意見を頂いた。どうも、ありがとうございます、どの意見も非常に参考になりました。

 今回のエントリの問題に行く前に、前回のエントリを振り返ってみよう。前回のエントリでは、私は「ネットワーク資源を集中させる仕組み」だけでは無く、個々人にとって最適なWebを作るための「サーバ」としてP2Pを利用できないかを考えてみた。

 前回は「サーバ」という言葉を、様々な意味で使ってしまったために、少しわかりにくい文章になったかもしれない。そもそもP2Pなのに「サーバ」というのは定義的には変だ。

 そこで、ここからは「P2P的な方法を使い、クライアントをサーバに変化させた物」を「サーバント」と呼ぶことにする。この「サーバンド」という言葉を使って、前回のエントリをもう一度まとめると、従来のサーバントは「ネットワーク資源を運んでいた経路に過ぎない」のに対し、今後の「サーバント」は「ネットワーク資源だけで無く、従来はサーバを借りたり/作らなければできなかった機能も実現する」可能性があることを考えてみた。

 今後この機能が実現した場合は、現在言われている「P2Pの通信形態」が、従来のP2Pで言われている「対等な通信」とは少し違うような形態になるかもしれない。

 現状のP2Pで「対等な通信」と言われているのは、能力にそれほど大きな差が無いクライアントが、各人のネットワーク資源を共有している状態を指している事が多いと思う。

 現在のところ、P2Pネットワークに参加したパソコンは、基本的に誰とでも接続できる。このような、誰とでも接続できる「対等なネットワーク」は、Winnyのように、ネットワーク上の共有資源を集めるようなアプリケーションには良いと思うが、サーバント毎に違う「サービス」を提供している場合は、誰とでも接続されてしまっては困るような状況も出てくる。

 また、最近は「m2m-x」を始め、ネット家電にもP2Pのような技術を応用しようとする動きがある。しかし、ネット家電や携帯電話等はこれらのネットワークと「対等な通信」を行うのは難しい。

 なぜならば、デジタル家電と携帯電話を含むモバイル機器は、一般的に従来のパソコンよりも処理能力が遅いか、なんらかの問題がある。これらを強引にパソコンのみで構成されたP2Pネットワークに加入させると、色々不都合が出てくる。

 まず、モバイル系の端末の場合、電源と通信料金の問題がでてくる。最近こそ、通信料金が定額制になる端末/プランが出てきたが、基本的に携帯電話の通信料金は従量課金制だ。これらの端末をP2Pネットワークに参加させるのは、料金面でかなり勇気がいると思う。

 もちろん、最近では定額制の端末/プランが登場しているし、無線LANなどが搭載されているデバイスも多くなっている。これらを使えば、通信料金の問題は解決するだろう。しかし、モバイル端末の場合は「電源」の問題がある。モバイル環境下で長時間、現状のP2Pネットワークに参加させるのは難しいだろう。

 また、HDDレコーダ等のネット家電は「対等な通信」をされると困る場合がある。家庭内の数台のテレビにストリーミング配信する程度ならば大丈夫であると思うが、HDDレコーダ内にある録画データが、そのままインターネットで共有されてしまっては困る。

 現状のP2Pネットワークに接続されている端末のほとんどがパソコンであり、接続されているデバイスの機能には、それほど大きな差は無い。しかし、ネット家電やモバイル端末がP2Pネットワークに加わってしまうと、現状言われている「対等な通信」は不可能に近いと思う。

 現状のP2Pネットワークは、基本的に1つのネットワークに単一のサービス(主にネットワーク資源のリレー)が行われているだけであり、そのP2Pネットワークを構成しているのも、それほど能力に差が無いパソコンがほとんどである。そのため、従来は「P2P=すべてが等しくつながる通信形態」と考えても良かったのだと思う。

 しかし、仮に各サーバントが独自の「サービス」を提供し、接続されるデバイスにデジタル家電やモバイル端末が出てきた場合には「すべてが等しくつながる通信形態」では、サーバントが提供する「サービス」に様々な不具合が出てくる。

 それを防ぐために「すべてが等しくつながる通信形態」では無く、各サーバント間が接続すべき相手を自動的に探しだし、「接続すべき相手」同士でネットワークを作っていくようにしていくべきだろう。