協調フィルタリングは、中学生だった私に「ビッグ4」をちゃんと勧めてくれただろうか?

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先日、図書館の情報システムを研究されている方とお話をする機会があったのですが、その中で、図書館のシステムも将来的にはコンテンツを推薦するようなシステムの開発も進んでいくのではないかという話になりました。協調フィルタリングなどインターネット経由によるコンテンツ推薦は既にお馴染みですが、図書館や書店でこのようなシステムはあまり見ません。これが将来的には「セマンティック」な仕組みが整備されて、図書館などにも導入されていくのではないでしょうか? というお話でした。

このような話を聞いたので「今だったら、図書館の司書さんが、そういう事やってくれそうですね」と言ったら、微妙な反応をされてしまいました。なるほど、確かに目的の本がわかっていれば、図書館の検索システムを使えば良いですし、本を探すために司書さんに声をかけるのは、なんとなくやりづらいです。さらに言えば、そのような司書さんが本当に自分が求めている本を探し出せるか疑問があります。

ただ、それでも私はこのような「人によるコンテンツ推薦」は、あながちバカにできないと思っています。と言うのも以前に、このような人によるコンテンツ推薦の優れている所を見ているからです。

まだ、私が中学生だった時、放課後によく図書室を利用していました。当時、推理小説を読み始めたばかりの私は、図書室の先生に「エルキュール・ポアロ シリーズで何かおもしろい本を紹介して」とお願いをしました。それで、その先生が持ってきたのは「ビッグ4」という作品。私は、既に「ビッグ4」を読んでいて「それならば読みましたよ、面白かったですよ」とその先生に答えてその話はおしまいになりました。

この話だけならば、特になんてことは無い「図書館の先生がおもしろい本を勧めてくれた」という話だけです。しかし、問題はこの「ビッグ4」という作品です。私は後から知ったのですが、実はこの「ビッグ4」、エルキュール・ポアロシリーズの中でも最大の駄作もしくは珍作と言われている本です。個人的には非常に好きな本だったのですが、通常のポアロシリーズのような推理小説というよりも冒険小説となっている所から、従来のファンから嫌われたのでは無いかと思います。

それでは、なぜ図書室の先生は、私に「駄作・珍作」と言われた「ビッグ4」を勧めたのでしょうか? 恐らく、この図書室の先生が自分の読んだポアロシリーズの中から、私の年齢や今まで読んできた本などを推測して、他の有名な作品(例えば「ABC殺人事件」「アクロイド殺し」「オリエント急行殺人事件」etc)を勧めずに、この「ビッグ4」を勧めたのだと思います。

もし、私の学生時代に「協調フィルタリング」による書籍推薦システムが出来ていたら、そのシステムが「ビッグ4」を推薦しないと思います。恐らく順当に「ABC殺人事件」「アクロイド殺し」「オリエント急行殺人事件」などを勧めたでしょう。

もちろん、そのような検索結果が悪いというわけではありませんし、実際にAmazonのレコメンドシステムを利用している人も多いと思います。ただ、まあ個人的には図書室の先生をはじめとした、人によるコンテンツの推薦もまだ々捨てた物ではないと思います。

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これは、2009年に投稿した物を再編集したものです。この話は、今でいうと「キュレーション」の話になるのでしょうか?