前回からずいぶん時間が経過してしまいましたが、「インフラエンジニア」向けトレンドのまとめの第二弾として「Flat-File CMS」を集中的に取り上げたいと思います。
Flat-File CMSは、まだ日本ではそれほど大きく取り上げられていませんが、数年前からOctopressなどのツールが登場し、最近ではghostというブログツールに注目が集まっています。今回は、Flat-File CMSの特徴と主なツールを紹介いたします。
《全てがWordPressで良いのか?》
現在、ブログやCMSを利用するのであれば、まず頭に思い浮かべるのは「WordPress」でしょう。実際にWordPress の CMS シェア54%とCMSを利用している半分のユーザはWordPressです。
しかし、最近ではWordPressではないCMSが注目を浴びています。これらのCMSは、WordPressなどのCMSとは違いデータベースを使用しないものもあったり、ローカル側で生成したファイルをサーバに上げたり、単にファイルを置くことでCMSとして利用できるもので「Flat-File CMS(ふらっと ふぁいる しーえむえす)」と呼ばれています。ここ最近、様々なFlat-File CMSが登場しています。
今回の「今年はやりそうなITトレンドのまとめ」は「Flat-File CMS」の特徴とメリットを紹介した後、代表的なFlat-File CMSをいくつか紹介したいと思います。
《Flat-File CMS(ふらっと ふぁいる しーえむえす)の特徴とメリット》
Flat-File CMSはWordPressと何が違うのでしょうか? 一番の違いはWordPressようなCMSが、動的にページを生成しているのに対し、Flat-File CMS静的なファイルを生成してWebサイトを更新します。つまりFlat-File CMSは「単に静的なHTMLファイルをサーバに置く」という非常にシンプルな動作でWebサイトを更新しています。
このようにMySQLのようなデータベースを利用せずに、静的なHTMLページでWebサイトを更新していくのがFlat-File CMSの大きな特徴です。しかし、なぜFlat-File CMSはWordPressのようにMySQLのようなデータベースを利用しないのでしょうか?
それは、Flat-File CMSがデータベースを利用しないことで、いくつか大きなメリットが生まれるからです。まず「スピード」です。データベースに問い合せる必要がないので、スピードの読み込みが早くなります。さらにデータベースのメンテナンスや攻撃も考える必要がなくなります。次にサーバの移動が楽になります。データベースがある場合は、コンテンツをサーバに移動する場合は、データベースに格納されたデータのエクスポート/インポートが必要になった他、データベースの設定も必要ありません。さらにMySQLのようなデータベースを利用していると、そのバージョンが問題でCMSがバージョンアップできないという問題もありますが、Flat-File CMSはMySQLのようなデータベースを利用していないので、そのような問題は起こりにくいでしょう。
《主なFlat-File CMS》
ここまで、Flat-File CMSの特徴を見てきましたが、ここでいくつか代表的なFlat-File CMSを見てみましょう。
《Ghost》
Ghostは、最も注目を浴びている、人気急上昇のNode.js製のブログエンジンです。開発資金としてKickstarterで資金を集めた事やUIがシンプルで美しい事が話題となりました。
ghostは、いくつかの有名どころのホスティング会社がサポートしていることや何人か著名な人達がGhostに移動した事、また既にテーマなどのMarketplaceが可動している事などがあります。
また、日本語ガイドが翻訳されている事や、日本のユーザも増えてきていることから、日本でもGhostを利用する人が増えてくると思われます。
Node.jsが必要な事から一般的なレンタルサーバでは動かせませんが、いくつかの有名どころのVPSホスティング事業者がサポートしている事やGhost専用ホスティングなども登場しています。
[追記]
※Flat-File CMSはデータベースを使用しないと書きましたが、Ghost自体はデータベース(SQLite )を利用し、設定自体ではMySQLを利用いたします。ご指摘ありがとうございます。
[関連リンク]
・Ghost – Just a blogging platform
《HTMLy – Databaseless Blogging Platform (Flat-File Blog)》
HTMLyは、タイトルに「Databaseless Blogging Platform (Flat-File Blog)」とタイトルにある通り、データベースが必要の無いFlat-File CMSです。PHPで書かれているため(Ghostに比べて)VPSではなく一般的なレンタルサーバでも動かすことが可能です。Githubには「You do not need to use a VPS to run HTMLy」と書かれていることから作者もその部分を意識しているのでしょう。
[関連リンク]
・HTMLy – Databaseless Blogging Platform (Flat-File Blog)
《その他》
「静的なページを作る」ということでは、JekyllやOctopress、Pelicanといったツールがあります。また、PicoやMonstraなども有名です。
《本当にFlat-File CMSが流行るのか?》
ここまでFlat-File CMSの特徴などを見てきましたが、本当にFlat-File CMSが流行るのかどうかは、正直なところまだわかりません。WordPressは、既にドキュメントも多くあり、一般的なレンタルサーバですぐに利用できます。しかし、Flat-File CMSは、まだドキュメントも少なく、一番人気があるGhostもNode.jsが必要となることから一般的なレンタルサーバでは利用しにくく、VPSやIaaSを利用しないとインストールできません。WordPressに比べるとかなり敷居が高い印象があります。しかし、前述した通りGhostなどは徐々に利用されはじめており、ブログツールとして存在感が出ています。日本でも今年からGhostなどのFlat-File CMSが普及するかもしれません。
今回は、Flat-File CMSについて集中的に解説しましたが、次回は既に死語になりつつある「DevOps」や「Docker」などの最近トレンドなどの言葉を解説したいと思います。
[参考リンク]
・Goodbye WordPress: 2014 Will Be the Year of the Flat-File CMS ? Type & Grids