横田です。最近はセミナーでの登壇やハンズオンなど人前で話すことが多くなってきまして、だいたい1年で50本ぐらいで1週間に1度は人前でしゃべっています。
これだけ登壇機会があると、さぞかし話が上手いと思われるかもしれませんが、実は最初から人前に出て喋る事が得意だったというわけではなく元々、人前に出て喋ることは、かなり苦手でした。どのぐらい苦手かと言えば、はじめて講演した時にしゃべりがダメダメで、講演中に客席から「ガンバレー」と声をかけられたぐらいです…
とは言え、最近ではだいぶ話す事に慣れてきて、色々とプレゼンを行う時のコツがわかってきました。そこで、年に50回のプレゼンを2年続けてきて、自分なりにわかってきた事をまとめて、2016年12月10日に実施した「第8回 エンジニアのためのプレゼン技術研究会」で発表いたしました。資料はこちらです。
今回のエントリは、上記の資料の中から私が重要だと思うところをもう少し詳しく説明をしてみました。
《いきなりパワーポイントでスライドを作り始めない。》
あまりプレゼン慣れていない方は、いきなりスライドを作り始めてしまうのではないでしょうか? 個人的には、まだプレゼンの構成やストーリーが出来ていない状態で、スライドを作りはじめるのは止めておいた方が良いと思っております。
とは言え、プレゼンと言うとどうしても「スライドを作る事」という印象が強く、最初にパワーポイントを立ち上げてスライドを作りたくなる気持ちもわからんでもありません。ただ、最初にパワーポイントやkeynoteを立ち上げて、いきなりスライドを作りはじめると結局スライドを作り終わるのに時間がかかってしまうと思います。
なぜなら、パワーポイントは確かに「スライドを作る」のには向いているかもしれませんが「スライドの中身を考える」には向いていないツールです。パワーポイントは1ページ々のスライドデコレーションはできますが、全体の構成やスライドに盛り込むアイデアを書きためておくには向いていないと思います。
全体の構成ができていない状態で何十枚ものスライドを短期間で作成するのは、かなり難しい作業です。プレゼン資料を作る時は、まずはパワーポイントを立ち上げるのではなく、まずはプレゼンの全体構成を作成するのが良いかと思います。
全体構成を作る方法としては、色々な方法があると思います。WorkFlowyのようなアウトラインプロセッサを使う人もいると思いますし、EvernoteやOneNoteのようなメモアプリで題材をストックしていて、そこから全体構成を作成する人もいると思います。もしかしたらScrivenerのようなツールを使う人もいるかもしれません。
ただ、私はこのようなツールはそれほど利用しておらず、普通のテキストエディッタを使っています。テキストエディッタで1度、全体構成を作成してからスライドの作成を行います。全体構成が作成されていると、スライドを作成する分量もわかりますし、全体構成が目次代わりになりますので、どこまでスライドを書いたのかがわかるのも便利です。
プレゼン資料を作るとなると、どうしてもスライドを作る事になるため、まずはパワーポイントを作ることになると思いますが、まずはテキストエディッタ等で全体構成を作っておくとスライドが作りやすくなると思います。
《プレゼン中にくじけない》
プレゼンをしていると、聞いている人達の様子は意外に見えるものです。熱心に聞いてくれる人は良いのですが、そうでは無い人達もいます。例えば、つまらなそうに、あくびをする人、寝る人、退席する人なども自分のプレゼン中に目に入ってきます。このような人を見つけると結構なダメージを受けて、プレゼン中でも「くじけて」しまう事があると思います。
このような人を防ぐには、事前にどのような人が参加するのかリサーチしていくことが重要です。connpassなどのイベントサイトでは参加者を確認できますし、イベントの主催者に聞けば、どのような人達が参加するのかわかる場合があるので、プレゼンの聴衆がどのような人達なのかを確認しておくと、その参加者にあわせたスライドを用意できます。
また、プレゼンの冒頭に「これから自分が話す理由は何か?」「自分がどうして、この場所にいるのか?」「なぜ聴衆の皆さんはそれを聞く必要があるのか?」という事を説明しておいた方が良いでしょう。要は自分のプレゼンが聴衆の皆さんにとって、どんな意味があるのかを説明し「これから行われるプレゼンが、自分にとって意味のある話」という認識を持ってもらうと、興味深く聞いてくれる人が増えていきます。
(このあたりは、西脇さんの「新エバンジェリスト養成講座」の「P57 プレゼンテーションの黄金比」が詳しいので関心のある方はどうぞ)
ただ、どんなに自分のプレゼンが上手くとも、プレゼン中はあまり良い反応をしない人もいますし、場合によっては寝てしまう人や途中退出をする人も一定数は出てきます。そういう場合は「そんな事もある」と考えて気にしないことが重要だと思います。
また、プレゼンの反応が鈍くとも、ちゃんと聞いてくれている人は一定数はいます。反応が鈍くとも、寝ている人がいても「くじけず」にプレゼンをやり抜くことが重要だと思います。
《声は大きく》
他の人のプレゼンを聞いていると、話の内容もスライドも良いのに、なかなか話の中身が頭に入ってこないプレゼンがあります。そういうプレゼンの中身が頭に入ってこないプレゼンの1つに、発表者の声が小さく聞き取りづらいというものもあります。
もちろん、マイクがあれば声の小ささはカバーできますが、マイクが無い会場もありますし、マイクを使っても声が小さく聞き取りづらい方もいらっしゃいます。どんなに発表の内容が良くても発表者の声が聞こえなければ、プレゼンに集中してもらえません。
ですので、プレゼンはマイクに頼らなくとも良い音量でプレゼンを行うのが良い方法だと思います。大きな会場では、どうしてもマイクは必要になると思いますが、40名程度の人間が入る場所ではマイク無しで、最後方の人まで聞こえるような音量でしゃべるべきです。
(このあたりは開米さんの「エンジニアを説明上手にする本 相手に応じた技術情報や知識の伝え方」の第四章「デリバリー:口頭説明の技術を知っておこう」が詳しいです。ご関心がありましたら、ぜひ)
《プレゼンに慣れていない》
今まで、色々とプレゼンのテクニックを説明してきましたが、これだけの事を覚えればすぐにプレゼンは上手くなるのでしょうか? 残念ながら、このようなテクニックは頭で覚えていても、すぐに実践で利用するのはとても難しいと思います。
さらに言えば、私が今まで説明してきたテクニック以外でもインターネットを検索すれば「プレゼンテーションをうまく実践するやり方」がたくさん書かれた記事を見つけられると思いますし、書店に行けば「プレゼン」に関する本は山のように見つかると思います。
しかし、単に「インターネット上のプレゼン向上の記事(もちろん私の記事も含みます。)」やプレゼンに関する本を読んだだけでは、恐らくプレゼンは上手くならないでしょう。プレゼンが上手くなるためには、実際に自分がプレゼンをしてみて「話をすることに慣れること」が必要だと思っております。
最初に書いたとおり私は大勢の前でしゃべるのが苦手で、プレゼンに対してはかなり苦手意識がありました。しかし、最近では会社・プライベートも含めて年に50本もの講演を行うことにより、話をすることやプレゼンに慣れてきました。私の場合は「プレゼンが上手いから年に50本の講演をするようになった」ということではなく「年に50本のプレゼンをするようになったら、プレゼンがマシになった。」というのが本音です。
ですので、プレゼンが上手くためには、まずはプレゼンの数をこなす必要があると思っております。「そんな事を言っても、しゃべる機会がない」という方も、いらっしゃると思います。そんな時はLTを募集している勉強会に参加して発表に慣れるのが良いと思います。LTであれば、短い時間ですので資料もそこまで用意することもないと思います。
ちなみに私と前佛さんがやっている「エンジニアのためのプレゼン技術研究会」は、参加者は全員、プレゼンをすることが必須となっています。「プレゼン慣れ」をする良い機会だと思いますので、ご関心があれば、ぜひお越し下さい。
《まとめ》
自分が年に50本を講演・ハンズオンを行うようになって、色々と考えていたテクニックをまとめてみました。他にもいくつかありますので、気が向いたら、また書いてみたいと思います。
[関連リンク]
・エンジニアのためのプレゼン技術研究会 – connpass